◆ 大学の部 (応募作品数:12点)
・金賞 冨谷 至君:北海道科学大学工学部建築学科
作品名 ― 隣接する兆
・金賞 白戸 採希君:北海道科学大学工学部建築学科
作品名 ― 刻の縫目
・銅賞 伊阪 遼君:北海道大学工学部環境社会工学科建築都市コース
作品名 ― 宿存する隙
◆ 短大・高専・専門学校の部 (応募作品数:4点)
・金賞 中村 悠佑君:北海道芸術デザイン専門学校建築デザイン学科
作品名 ―漁業都市の船出~道南江差における市場再生システム~
・銀賞 増田悠一郎君:釧路工業高等専門学校建築学科
作品名 ― sumika -学び舎ー
・銅賞 代表者 四ッ屋卓身君:北海道職業能力開発大学校建築科
作品名 ― Diversity..Eniwa -多様性をつむぐー
◆ 工業高校の部 (応募作品数:8点)
・金賞 奥村 玲菜君:北海道旭川工業高等学校建築科
作品名 ― おやすみ館&アメリカフェ~集う・憩う・めぐる~
・銀賞 佐々木灯里君:北海道名寄産業高等学校建築システム科
谷本 璃空君:北海道名寄産業高等学校建築システム科
作品名 ― 寄跡~古き良き名寄の奇跡~
・銅賞 横内 美紀君:北海道函館工業高等学校建築科
作品名 ― 道の駅 湯の川
審査講評
大学の部
金賞・冨谷 至君
これは建築そのものを呼び戻そうとする作品である。プログラムやコンテキストを解くことでその存在理由を見出そうとする建築ではない。むしろこの建築を解こうとすることで、プログラムやコンテキストが発展していくような作品である。このような建築の力を作者は「予感」と名付けている。これは機能と形態の関係性の新たなフェーズとなり得る概念である。作者の建築の根本を問う姿勢に金賞を授けるものである。
(文責:久野 浩志)
金賞・白戸 採希君
函館山の自然、歴史を見直し、観光地の展望台にとどまらない魅力を提案した作品である。展望台と山頂や砲台跡の戦争遺構などを結ぶ尾根筋に、施設をつなぐ通路と壁を設け、展示施設やアーティストレジデンス等各種の施設を埋め込んでいる。見えないものや忘れられた価値を探り、360度の眺望という魅力を活かすなど地形と壁の連続性などは、これまでの函館山とは異なる魅力がこの作品の力となっている。各施設のデザイン要素の統一は、作品に力を与える一方で、本作品のテーマである刻の一部になる時系列の変化してゆくことへの提案がみられるとより提案に深みが増したであろう。
本提案は、函館山への提案にとどまらず、観光地への普遍的な提案である。その高い視点と完成度に金賞を授けるものである。
(文責:齋藤 文彦)
銅賞・伊阪 遼君
作者が人間関係において見出した仮定を、都市スケールに展開しようとする挑戦的な作品である。「人は互いの「隙」によって親密で優しくなれる。効率や合理性に支配されつつある都市において、人の「隙」にあたる都市の「隙間」を護れないか?」との「問」から作品が始まる。グリッド都市札幌の一街区の中心に「楔」を打ち込むことで中通りなどの「隙間」を定着させる。「楔」は垂直動線やインフラ、構造体となり周囲の既存建築を支え、街区更新時にはその基点となり、都市の多様性や受容力を担保していく。「楔」の形態や機能、構造などさらに検討を進めることでより良い作品になると感じる。以上を総合的に判断して銅賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 寛征)
短大・高専・専門学校の部
金賞・中村 悠佑君
江差の海沿に建つ市場は美しい描写でストーリーが展開された計画となった。
街の歴史と各町内会の象徴を建築に転写し、見事な建築に仕上がった。
伝承も忘れないが、100年後の未来の時間までもデザインされている。
観光も職場環境、物流に至るまで徹底的に考え抜かれている。これも建築の力で、故郷を何とかしたい。という強い意思でもある。
建築に携わる、自分も含めて全ての人は社会に対して貢献する姿勢を忘れてはならない。そう考えさせられる作品である。
(文責:中山 眞琴)
銀賞・増田悠一郎君
釧路の学生寮の提案である。既存の学生寮の事情と学生寮の本格的意義である共同生活による人間としての成長のあり方をハニカム形状の構造に着目し検討・計画された。
ハニカムの特性を工夫し、主構造であるコンクリートの水平床の上に3層のハニカムユニットが組み込まれた提案は、サイズを含め寮としてユニークで独自性を感じる内容である。平面・垂直方向にもハニカム展開され光が溢れるファサードに新しい創造性を感じるものとなっており、提案と新しい創造力に銀賞を授けるものである。
(文責:遠藤 謙一良)
銀賞・代表者 四ッ屋卓身君
Diversity=多様性を重層的に解釈した作品。交通の利便性から様々な地域から人が集まる多様性。緑、花、川など自然の要素の多様性。計画地である恵庭市の持つ多様性を生かし、滞在型ファームスクールを提案している。計画の背景として、恵庭市の置かれている状況、課題を分析、恵庭市の魅力を分析し、人をつなぎ、人と自然を結びつける提案として結実している。内部空間においても、人のつながりを感じさせる空間を中心に構成されており、全体計画から建築計画まで、一貫したコンセプトでつくられている。造形や建築空間としてもう少し魅力が欲しかった点、表現としてわかりづらかった点など改善すべき内容はあるが、建築を生み出すためのひたむきなプロセスを評価したい。
(文責:菅原 秀見)
◆ 工業高校の部
金賞・奥村 玲菜君
旭山動物園に計画した休憩所、南北アメリカ大陸の動物展示施設、カフェの複合施設の提案である。休憩所や資料室の少なさや、動物を見ながら食事のできるの必要性など、現地で感じたことが提案の源であることが提案の強さにつながっている。2階から見下ろすカフェは、動物園ならではの場所として魅力がある。また、資料室も多くの人の目に触れるよう2階に配置するなどの工夫がみられる。
紙面構成や色合いなども提案にふさわしいものとなっており、高校の部の金賞を授けるものである。
(文責:齋藤 文彦)
銀賞・佐々木灯里君,谷本 璃空君
歴史ある名寄駅の現状の問題点を考え、市民がより多く集まる為のリノベーションの提案である。
計画は名寄駅とその周辺環境を見直すことで駅にレストラン・本屋と様々な機能を加えまた、エスカレーターなどでバリアフリー機能性を高め、子供から老人までが利用できるユニバーサルな視点でバランスよくまとまっている。より具体的な空間の提案・表現がある事でより提案が明確になったかと思う。
再生という視点と計画の完成度に銀賞を授けるものである。
(文責:遠藤 謙一良)
銅賞・横内 美紀君
函館、湯の川に計画した「道の駅」である。函館の建築の歴史を参考に和洋折衷のデザインを試みるとともに、足湯やイートインコーナーなど現代のニーズにあわせた機能を設けるなど、幅広い視点で設計された優しい建築となっている。丁寧に書き込まれ、水彩で仕上げられた手書きの図面やパースからは、作者の作品への情熱を強く感じ取ることができた。以上の点から、銅賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 寛征)