2017年度卒業設計優秀作品

◆ 大学の部 (応募作品数:13点)
・金賞  佐藤 優太君:北海学園大学工学部建築学科
   作品名 ― 六冬の群像ー市庁舎の境界を解くー
・銀賞  桐谷 あやの君:東海大学国際文化学部デザイン文化学科
   作品名 ― たたむ  何も引かない、未来だけ足す
・銅賞  八木  悠君:北海学園大学工学部建築学科
   作品名 ― ーそして「  」は彼らを想うー

◆ 短大・高専・専門学校の部 (応募作品数:3点)
・金賞  ランディ ハントロ君:釧路工業高等専門学校建築学科
   作品名 ― Scenery of Wordsー釧路国際旅客船ターミナルー
・金賞  中山ゆかり君:北海道芸術デザイン専門学校建築デザイン学科
   作品名 ― 湧水交差点
・銀賞  炭田あすみ君:北海道芸術デザイン専門学校建築デザイン学科
   作品名 ― 纏う

◆ 工業高校の部 (応募作品数:8点)
・金賞  鈴木 志穂君:北海道名寄産業高等学校建築システム科
中矢 共起君:北海道名寄産業高等学校建築システム科
渡辺 和樹君:北海道名寄産業高等学校建築システム科
   作品名 ― 名よせの足あと
・銀賞  館山真理奈君:北海道函館工業高等学校建築科
   作品名 ― 「函館銀座通り」の再生計画~甦る大正ロマン~
・銅賞  折尾  渉君:北海道旭川工業高等学校建築科
   作品名 ― 旭川市役所新総合庁舎案

審査講評

大学の部

金賞・佐藤 優太君
  この作品は昨今話題になっている旭川市庁舎の建替え問題に着目し、周辺に分散している現状の市役所機能の統合と市民の場をつくるために歴史的価値のある現庁舎を再生利用し、また問題となっている耐震補強をおこなう提案である。
 新しく増床を行っているがその手法はあくまでも低層棟の水平性と高層棟の垂直性のデザインボキャブラリーを守りながら構築され、現在の問題を解消するものである。これは現庁舎への敬意と作品価値を見極めた結果であり、社会的意義と未来への街の財産をも視野に熟察されている。
 旭川の歴史的スカイラインを守る姿勢と提案は金賞に相応しく現実みさえ感じさせる。
(文責:小西 彦仁)

銀賞・桐谷 あやの君
  この作品は過去と現在と未来をつなぐ、実に重要な手法の街づくり再生構法である。
スクラップ&ビルドの日本社会に一つの光ある方向性を示唆している。
具体的でもあり、現実的で、未来的でもある。
過去から現在までの継承や歴史も建築の素材になっており、なんとも明解である。
綿密な調査から得た確実性もこの作品をより強固なものにしている。
プレゼンテーション力が少々欠けていたため銀賞になったが、充分金賞の内容を孕んでいる。
(文責:中山 眞琴)

銅賞・八木  悠君
  人の終りを火葬と考え、身寄りのない孤独死した者を弔う為の空間、火葬場の提案である。
多くの火葬場は、故人の親族や友人関係者が故人を送る事を前提につくられており、その空間は送る人が主体となった計画になっている。
孤独死した方は、送る人がいない為、火葬の空間は、それを執り行う人が主体となった利便的計画となる。
本計画は孤独死した人全てが、尊厳を持って死を迎え送られる為の空間であり、その空間の主体は、孤独死した当人であり、執り行う職員でありまれに訪れる人々である。
人が不在であっても孤独死した人が尊厳ある死の瞬間を迎える為につくられた建築は大地に確かな痕跡を刻み、敷地 の環境や海や空の世界と空間が繋がり、融合しながらやがて火葬の空間で光に満ちた無限の世界に昇天する。
人間が自然の一部である事をシンプルに強く痛感する本質的な、テーマに向かった創造力は、優れており銅賞に値する。
(文責:遠藤 謙一良)

短大・高専・専門学校の部
金賞・ランディ ハントロ君
  人口減少に悩む釧路の観光の起爆剤となることを目指した大型旅客船ターミナルの計画である。用意される無数の風船がターミナル屋上から噴き出る歓迎イベントや小さなクルーザーへの乗り換えの仕組みなど、わくわくする提案が楽しい。自由曲面によるその造形やターミナルに新たな風景をもたらすこと自体は、既視感はあるものの、それらを一つの提案にまとめ上げた力量は、見事であり、金賞を授けるものである。
(文責:齋藤 文彦)
金賞・中山ゆかり君
 「水」と「ひと」の関わりをテーマとした提案である。
豊かな水に人が集まり、コミュニティーが形成され、産業が栄えた。その地域が今、衰退の時期を迎えている。建築の力で新たな魅力を生み出せないかとの作者の素直な思いが感じ取れる。
建築のプログラムは、旭川市東旭川町において、大雪山の湧水を拠り所とした、自然と共生した交流の場である。訪れる人は、田園の中に点在する湧水小屋を巡り、丘のようなドーム状の建築にたどり着く。その内部には湧水を利用した酒蔵、湧水小屋、会所、ワークショップ広場など、「水」と「ひと」の関わりから生まれる活動や機能が広がる。このドームはアーチ状のコールテン鋼により支えられるており、一部は煙突やトップライト、換気口の機能を果たすなど、意匠と機能、両面への配慮が感じ取れる。
地域への思いに溢れたテーマであること、作者の感性が、空間造形、プレゼンテーションともによく表現されていることより金賞がふさわしいと考えた。
(文責:小倉 寛征)

銀賞・炭田あすみ君
  マフラーを纏うイメージから緑豊かな公園の木々に纏うスカイデッキが連想されファンタジックな世界が展開されている。都市公園にアーティストが住まう空間をつくり、まちづくりのきっかけを生み出す提案である。7階のレベルでそれぞれの建築をつなぐデッキが交流を生み出す装置になるかどうか疑問もあるが、樹木を身近に感じるための日常的ではない高さのデッキ空間は雲の上を想起させる魅力を持っている。表現手法も設計主旨を的確に表現する力量を持っており、銀賞に値すると評価した。
(文責:菅原 秀見)

◆ 工業高校の部

金賞・鈴木 志穂君,中矢 共起君, 渡辺 和樹君
  滅びゆく街や商店街、ここ名寄に限ったことではない。全国、いや、全世界に拡散している。
経済という名の大型商業施設が旧街をのみこむ。
しかしそれは、個商店主達の怠慢が手伝った事も確かだ。
しかしどうだろう、大型店の並ぶ街にどれだけの人々が魅力を感じていることか。
この作品は人と人との関係性をデザインしている。
街をなんとかしたいという一途な強い気持ちが前面に表れている。
清々しいこの作品に、なぜか涙が出た。
昔はこうだった、こんなこともした、思い出がよみがえる。
スクリーンだけでなく、もっと細部にまでその気持ちが深く浸透している。
(文責:中山 眞琴)
銀賞・館山真理奈君
  大正時代から「函館銀座通り」は3階建の様々な洋風なデザインの建築でつくられ一大繁華街で賑わった。
本計画は、その後変わっていった街並をかつての洋風イメージとして再生し、路面の1階は現代に相応しい店舗に、2階以上を住居の職住一体とし、また家具備品は当時を想定したデザインを手掛ける事で、単に街並のファサードだけではなく人々が楽しめる生きた計画となっている。
成熟した時代の中で、街の再生においてその街の歴史を振り返る事は大切な視点であり、本計画は地域の固有性を創造する優れた内容でここに銀賞を贈る。
(文責:遠藤 謙一良)
銅賞・折尾  渉君
  大学の部でも題材となっていた旭川市役所庁舎の計画であり、こちらは、新築案となっている。庁舎建築は、市民のための施設でありながら効率的なオフィス空間が求められる2面性を有することとなる。本提案では、地下1階、地上8階建の計画とし、中央に小さいながらも吹抜けを設けることで、機能的で新しい庁舎を提案している。本計画は、大きな施設に挑んだものであり、高校生の提案として高く評価された。よって、銅賞を授けるものである。
(文責:齋藤 文彦)