◆ 大学の部 (応募作品数:13点)
・金賞 河中宗一朗君:北海学園大学工学部建築学科
・銀賞 南 嗣美君:北海道科学大学空間創造部建築学科
作品名 ― 国立国会図書館
・銅賞 青葉 桜君:北海道大学工学部環境社会工学科建築都市コース
作品名 ― 中心紋
・銅賞 樫村 圭亮君:北海道大学工学部環境社会工学科建築都市コース
作品名 ― 残沼の址
◆ 短大・高専・専門学校の部 (応募作品数:5点)
・金賞 佐藤 夏菜君:北海道芸術デザイン専門学校建築デザイン学科
作品名 ― Time axes~時間軸がおりなすストーリー~
・銀賞 千葉 優弥君:釧路工業高等専門学校建築学科
作品名 ― ホームレスによるホームレスのためのホームレス住宅
・銅賞 菊地 留花君:釧路工業高等専門学校建築学科
作品名 ― こどものむら
◆ 工業高校の部 (応募作品数:6点)
・金賞 目黒 海都君:北海道名寄産業高等学校建築システム科,阿部 悠佑君:北海道名寄産業高等学校建築システム科
作品名 ― 立ち上がれ 名寄二條市場
・銀賞 山内 翔馬君:北海道旭川工業高等学校建築科
作品名 ― 北彩都美術館
・銅賞 黒川 沙彩君:北海道函館工業高等学校建築科
作品名 ― 函館和洋亭
(3)審査講評
- 大学の部
金賞・河中 宗一朗君
人工的に出来たダム湖の自然体である水に人工物である建築を存在させ、人口的な水位によって自然と変位する建築の姿が出現する。幾重にも人工と自然のフィルターが錯綜し融解する美しい作品である。現実的でないファシリティーや建築的バランスを除き、ほぼ完璧な作品と言える。情景的なこの作品は、人工と自然との境界線を問題提起した作品と私は捉えた。
(文責:中山 眞琴)
銀賞・南 嗣美君
二元対比の原理はこの地球上では必然とも言える。この世の中の全てがこれで成り立っているといっても過言ではない。この設計は垂直と水平の二元により空間化したものであり、それを図書による書架(垂直)と床(水平)で構成していく。一年間に図書受入された本の数を12等分に分け塔状に積層する、それを100年分100塔(棟)になると次の郡に分ける。毎年の蔵書量には増減がありそれが建築の塔の高さを変え、さらに12等分され階高も変化する。規律的建築要素が不規律になり隣立する塔の変化は生物的で敷地である原始林の森に新たな風景を弛まずつくり続けることだろう、そして自然と建築の二元対比がより互いを際立たせる端整で美しい作品である。さらに建築が増殖していくときの原始林との関係を解いてほしかった。
(文責:小西 彦仁)
銅賞・青葉 桜君
札幌中心部、グリッド街区の内側となる空間を周辺の既存建築の柱、梁の構造を延長するように空間化し、そこに作者の定義する新たな劇場を挿入する提案である。グリッド街区のもつ良さを活かしながら、新しい空間と機能を付加して行く、ある意味都市のリノベーションとも捉えられる作品である。グリッド街区の裏であった内側が都市の表となる。表と裏が「反転」された街区の影響は、その内部から外部へ、さらには周辺街区へと波紋のように広がり、日常と非日常の境界を曖昧なものにして行く。都市の現状、既存のビルディングタイプに飽き足らない作者の強い思いが感じられる提案である。しかし、限られた枚数のプレゼンテーションからはその空間の魅力が読み取り難く、また劇場の定義や活動イメージが十分に説明出来ていないのが残念である。以上を考慮し銅賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 征寛)
銅賞・樫村 圭亮君
かつて日本最大であった石狩湿地に存在した親子沼が、農業開拓により50年位の中で消滅しつつある。この計画はかつての沼の環境再生を目指し、敷地の水脈を観察し、土木技術による止水を行い長い時間の中で自然の再生と生態を体感できる場所の計画である。長い時間の中で自然の再生と生態を体感できる施設は木フレームや床、壁、開口、屋根とプリミティブに慎重に構成される事でより明確に自然を感じられる。長い時間の中で施設は自然の再生と共に水の中に消滅し、かつての風景が建築の力で再生する自然科学の大きな視点から建築に結びついた想像力を高く評価したい。
(文責:遠藤 謙一良)
- 短大・高専・専門学校の部
金賞・佐藤 夏菜君
根室市の市街地に建つこどもと老人のための施設である。既存の中学校に隣接して計画され幅広い世代の交流を意図している。建築は一つ屋根の下にスケールの小さい壁によりアクティビティの場を与えられ、廊下のない有機的に連続する空間が魅力的である。多世代交流は新鮮なテーマではないが、アクティビティについて具体的に考察され提案されているところが建築に命を吹き込んでいる。隣接する中学校との関係についてもう1歩踏み込んでほしかったが、金賞に値する魅力のある作品であると評価した。
(文責:菅原 秀見)
銀賞・千葉 優弥君
社会と距離を置くホームレスに社会復帰のきっかけとなる居場所を提案した作品である。木と段ボールなどの材料を自らが選択し、居場所を建設し、生活する空間である。ここでの生活は、社会復帰へのきっかけとなり、次の利用者に引き継がれる。支援する仕組み(NPO)が必要ではあるが、その発想は、社会資本としてではなく建築をフローとすることで成立している。自由ではあるが、その共通のインフラをシステムの成立の条件としている。その密度については、議論の余地があるかもしれないが、可変な建築空間とまとめ上げた点で優れており、銀賞に相応しいと判断されたものである
(文責:齋藤 文彦)
銅賞・菊地 留花君
こどもの世界にどっぷりと浸った時に、こんなファンタジーな建築の世界が描かれるのだろう。時間割もきっちりと考えられていてとても楽しそうだ。建築というよりアイディアの方に票が集まった。残念だったのは広場の使い方や形や配置方法が明記されていないので、「 なんとなく 」感が拭えなかった。図面表現やデザインは、本当にこども達のためを思った強い意志が十分に伝わった楽しい作品と言える。
(文責:中山 眞琴)
◆ 工業高校の部
金賞・目黒 海都君,阿部 悠佑君
名寄への「思い」と「情熱」が強く感じられる作品である。関係者への丁寧なヒアリングから賑わいを失った市場の抱える課題を発見し解決のための方針を提示。現地調査により既存建築の良さを損なわずに賑わいを取り戻すリノベーション案を提案している。在来木造の構造補強やデザインコードの踏襲により、提案された建築空間に奇抜さや派手さはない。しかし、それがかえって地方都市のおかれたリアルな姿に寄り添う建築だと感じられる。既存の建築が持つ制約を見事に新たな空間の魅力に繋げた作品だと言える。一見すると魅力がなくなった都市ストックの中に新たな可能性を見出すこと。それを積極的に活用してゆく姿勢に地方都市の希望を見た気がする。
(文責:小倉 寛征)
銀賞・山内 翔馬君
旭川駅周辺の再開発地区に計画された美術館である。市の中心部でアクセスの良さを考え一般市民はじめ高齢者や子供そして観光客の利用には最適な場所である。空間は天井高さの変化やスキップフロアー等の操作により変化にとぶ、そしておおらかな空間が予想される。その構成は外部の形態にも影響を与え、凹凸の多い外観は来館者の空間への期待を増幅させるだろう。アプローチの街灯や建物を一部池に乗せるなど更に建築を際立たせる操作は効果的である。これからの作者の将来が楽しみな秀作であった。
(文責:小西 彦仁)
銅賞・黒川 沙彩君
函館の歴史的建築物を利用し、旅館として再生する計画である。外観を生かし、客室内部も和洋室がさまざまな形で構成され、統一された景観に変化のある空間を組み合わせたプランは施設全体の魅力を高めている。函館の街並形成で最も大切な歴史的建築物を時代が求める用途に変更し、外観を極力保存する事は、豊かで魅力あるこれからの街づくりにとって、最も大切な事の1つであり、施設と街が共に良くなる視点と計画を評価したい。
(文責:遠藤 謙一良)