2015年卒業設計優秀作品集

◆ 大学の部 (応募作品数:13点)
・銀賞  北原  海君:北海道大学工学部環境社会工学科建築都市コース
作品名 ― 小さなまちの再構築
・銅賞  菊地 翔太君:北海道科学大学空間創造部建築学科
作品名 ― 生活の貯蔵庫
・銅賞  今井あかね君:北海道大学工学部環境社会工学科建築都市コース
作品名 ― Future Cave

◆ 短大・高専・専門学校の部 (応募作品数:5点)
・金賞  鳴海 舜君:釧路工業高等専門学校建築学科
作品名 ― コミュニティを体現する足場群
・金賞  中山 琴未君:北海道芸術デザイン専門学校建築デザイン学科
作品名 ― Interaction Line
・銅賞  秋山 愛斗君:北海道職業能力開発大学校建築科
作品名 ― infinite possibility of The  RIKUZENTAKATA
-3.11の教訓を活かした陸前高田市都市復興計画-

◆ 工業高校の部 (応募作品数:5点)
・金賞  髙坂 昌樹君:北海道札幌工業高等学校建築科
本間  結君:北海道札幌工業高等学校建築科
作品名 ― PUBLIC SQUARE~つうじあう小学校~
・銀賞  鈴木  翔君:北海道名寄産業高等学校建築システム科
作品名 ― 名寄市が一致団結するまちづくり計画 すきまに築く
・銅賞  神山  碧君:北海道名寄産業高等学校建築システム科
作品名 ― BOOKSHELF LIBRARY
五感で学ぶ生涯学習ゾーン
(3)審査講評

◆ 大学の部

銀賞・北原  海君
夕張市の炭鉱時代から続く老朽化した住宅・共同住宅から新しい場所に集まって住む計画である。作品は傾斜する屋根が連なる住居群が緑豊かなゆったりとした敷地の中に配置され、北海道で古くからみられる色彩で彩られたどこか懐かしさと心地良さを感じる風景が印象的だ。計画にあたり、住民・行政にヒアリング調査をした事から、経済合理性と地元施工を前提としたシンプルな中に生 きたコミュニティが再構築される為に、個々の住民のライフスタイル・意向を反映し共同で住むための共有スペースもプログラムを含め慎重に 計画されており、新たに小さな地域が再生される可能性が評価された。個々の建築や関係の空間表現をさらに進める事で、より作品の内容が進化する事が期待される。
(文章 遠藤謙一良)
銅賞・菊地 翔太君
地方の街はどこも同じであるが、少子高齢化となり加速度的に過疎化が進行している。この計画の北海道蘭越町目名地区も例外ではない。そんな地はいつしか空洞化も併発する。その中にあって地区最大の空洞化空間である「農協米倉庫」のコンバージョンがこの計画である。建築構造物としても持続可能である事に着眼し、ここに街の人々が集まる複数の公共空間をボーダー状に連続していく、それは街のアーカイブ的空間でありどこか懐かしくも感じる。そうする事により未来へつなげる記憶装置ともなり得る。街の建物は次第に消滅していってもこの街の記憶はこの倉庫に宿り続ける。
この地区に残る建物を使用し人々の思や経験、視覚を封印しながら、社会現象に対応すべくこの計画を賞賛し未来に託したい。
(文責:小西 彦仁)

銅賞・今井あかね君
壁一つ隔てて全てが隔絶する現代日本の集合住宅のあり方に疑問を抱いた作者の、「集まって住む」ための新しい建築の提案である。ドーム状のユニットを上下左右にランダムに重ねることにより、生活のための洞窟のような「内部」が生まれる。一方、連なるドームの間には「隙間」が生まれることになる。その隙間を「公」と「私」、「内」と「外」をつなぐ空間であると定義し、両者がゆるく曖昧に同居する集合住宅の空間モデルを示している。また、既存の団地群のなかにドーム状ユニットの表情が現れたファサードを持たせることで、新たな集合住宅の空間を象徴的に表現することにも成功している。新しい空間により生まれる暮しや人間関係の豊かさがもう少し具体的に表現されていれば、さらに魅力的な提案となったと思う。今後の展開に多いに期待したい。以上を総合的に考慮して銅賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 征寛)

◆ 短大・高専・専門学校の部

金賞・鳴海 舜君
自身の通う学校の学生の属性の変化と施設の老朽化といった身近な問題を「コミュニティを再現する足場群」をコンセプトにまとめた作品である。学内の寮の部屋の不足、コミュニティ空間の不足などの課題への解決手法として対象敷地の余剰空間に対し、可変的で自由なシステムとして足場材を用いた提案となっており、劇画的な表現手法と相まって、どこか懐かしい魅力的な表現となっている。学生の要求(機能)から空間が作られたかのようなアノニマスな形状は、足場を用いる制約以上に多様な空間作りに成功しており、極めて高いレベルの作品であった。
よって、金賞に相応しいと判断されたものである。

(文責:齊藤 文彦)
金賞・中山 琴未君
Interaction とは、相互作用という意味である。この帯が全体をつなぎ、それぞれのファシリティーを連結していく。このプロジェクトは町おこしを兼ねている。考えられる全ての関係の成立をこの建築にこめている。なんと気持ちのよい事だろう。人と人との関係、雪と街、道と建築、文化と人、季節と人、残すという事と伝えるという事、これらは全て「心」を介在とする。建築というのは本来そうだったはずだ。多才なスケッチは更に我々を刺激して止まない。
(文責:中山 眞琴)

銅賞・秋山 愛斗君
3.11東日本大震災で大きな被害を受けた陸前高田市の復興計画をベースとした都市施設の提案である。まず印象に残ったのが提案が前向き、未来志向であること。災害の記憶をとどめるとか鎮魂などを提案の軸にするようなテーマ設定であるが、極めて冷静にまちの未来像を描いている。提案されている建築空間そのものは特に目新しいものがあるわけではないが、アンケートの実施やまちと建築を結びつけるアイデアの具体性など作品としての完成度は高い。
(文責:菅原 秀見)

◆ 工業高校の部

金賞・髙坂 昌樹君,本間  結君
高校生とは思えない。理論的なダイアグラム、そしてすがすがしい社会の解決の仕方、そしてなんとも美しい形態をもっている。社会と小学校の接点のもち方、関連性、ましては災害時における小学校のあり方、また授業の方法論などさわりの部分だけであったが、私を納得させるのに充分であった。建築内部に入りこんだ光を想像すると、なにか心にぐっとくるものが感じられる。将来が期待される。
(文責:中山 眞琴)
銀賞・鈴木  翔君
市街地の衰退への危機感を背景とした街づくり計画である。まちの隙間を生かすこと、「祭り」と「運動」をテーマにすることが論理立てて説明されており、作者の地域への愛情が感じられる。隙間に建築を挿入することにより生まれるアクティビティの連続、統一感のある景観形成などに現実性を伴う魅力がある。また、デパートの屋上に設けられた祭り小屋や体育館など屋根をモチーフとしてデザインされているが、歴史的な要素に流されることなく、シンプルにデザインされており、レベルの高い作品である。
(文責:菅原 秀見)
銅賞・神山  碧君
名寄市街の持続可能なまちづくりに向け、まちの魅力を向上させる場所として「視覚」「触覚」をキーワードとした人材育成のための図書館の提案である。本棚に囲まれた大空間、その中を交差する階段やスカイウェイは、図書館のもつ「視覚」的魅力を多いに活かした空間であると言える。実習ルームや学習ルームを大空間の各所に配置することで、「触覚」(学びの場)を上手に取り込むことにも成功している。また、丁寧に作られた模型と写真によるプレゼンテーションは目を引いた。作者の設計意図が上手に表現された図面となっていると感じた。以上を総合的に考慮して銅賞にふさわしい作品であると判断した。
(文責:小倉 寛征)