研究企画 北海道支部 ロシア極東住宅研究会
企画主旨
ロシアでは旧ソビエト連邦時代から集合住宅に住むのが一般的で、現在でも多くの世帯が集合住宅に住む。しかし、資本主義経済の導入とともに個人で住宅を所有する傾向が現れ、都市郊外に一戸建てが建設され始めている。
しかし、ロシアでは寒冷地の戸建て住宅建設の技術が未発達である。周囲に豊富な森林資源を抱えながら、戸建て住宅はレンガやコンクリートブロックで建設されており、断熱効果も十分とは言えない。
一方、北海道では日本建築学会北海道支部や北海道内各大学の建築学科、北海道庁をはじめとする行政機関および研究所が協力して、寒冷地に適した戸建て住宅の技術開発を進めてきており、現在までに多くの研究成果が挙げられてきた。
本研究企画は、同じ寒冷地であるロシア極東地域であるハバロフスク市を対象に、北海道で培われてきた戸建て住宅建設の寒冷地技術適用の可能性を調査するものである。
具体的に以下の4点を明らかにし、北海道の技術の適応可能性を検討する。
①現在、ハバロフスク市内で普及しつつある、一般的な戸建て住宅の規模(敷地面積や延べ床面積)および平均的な価格を調査する。
②戸建て住宅の建築資材を調査する(コンクリートブロック、レンガブロック、木造の比較)。
③戸建て住宅の建築技術について、文献資料(SNiP:建築基準および規則)と現地調査、ヒアリングにより明らかにする。具体的 には、住宅の構造、工法、構造体の材料、断熱材料を調査検討する。また、戸建て住宅の主な暖房の方法について調査する。
④建設会社の組織体制、および住宅建設における行政と建設会社の関わりについて、ヒアリングより明らかにする。
なお、本研究調査で得られた成果は、日本建築学会会員内外に広く還元する。
調査研究メンバー
大垣 直明 (北海道工業大学 教授)(専門:住宅生産)
瀬戸 口剛 (北海道大学大学院 助教授)(専門:住宅地計画)
荒井 信雄 (札幌国際大学 助教授)(専門:ロシア経済)
久保田 克己 (㈱北海道日建設計設計部 次長)(専門:建築環境)
H・ Y・ ワシリビッチ (ロシアハバロフスク州立工科大学建築学科 教授)
G・ R・ クレイス (ロシアハバロフスク市 第一副市長)
A・ V・ チェカノフスキー (ロシアハバロフスク州行政府住宅局 局長)
今までの研究実績
本企画の調査研究メンバーは、共同で下記プロジェクトを進めた実績がある。
「ロシア極東地方行政府改革促進支援-ハバロフスク地方行政府(住宅・公共サービス問題)に対する日ロ合同提案」,日本外務省,(1996-1998)
関連する既往研究
(論文):瀬戸口剛,荒井信雄,大垣直明,久保田克己,A・V・チェカノフスキー:「ロシアハバロフスクにおける公営住宅事業の方向性」,日本建築学会技術報告集,Vol3,243-247,(1996)
(論文):瀬戸口剛:「ロシアハバロフスク州および市における住宅・公共サービス事業に関する提案」,日本都市計画学会都市計画論文集,Vol32,685-690,(1997)
(著書):瀬戸口剛,佐藤圭二,他:「成熟都市の住環境改善 -アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・日本-」,日本建築学会,(1999)